転職理由ランキング2020年度＜総合＞

2020年度の1年間に転職活動を行った約10万人の転職理由トップ3は、1位「ほかにやりたい仕事がある」（11.2%）、2位「会社の将来性が不安」（10.2%）、3位「業界の先行きが不安」（10.1%）となりました。

2020年度はコロナ禍の影響もあり、前半の有効求人倍率は下降の一途をたどったものの後半には下げ止まり、徐々に上昇の傾向を見せています。これは経済全体や、所属する業界・会社に対する将来の不安が求職者の中にも広がり、前年度3位と4位だった「会社の将来に不安がある」「業界の先行きが不安」という転職理由がそれぞれ2位と3位となりました。前年度18位だった「倒産／リストラ／契約期間の満了」は大幅に順位を上げて8位となったことにも注目です。将来への不安に加えて、現実的に会社都合の倒産やリストラにより転職せざるを得ない人が増えてきていることが要因と言えそうです。

また、7位「専門知識・技術を習得したい」（前年度比0.1pt減）、6位「市場価値を上げたい」（前年度比0.8pt増）、9位「幅広い経験・知識を積みたい」（前年度比0.5pt減）など、スキルアップを望む転職理由は変わらず上位を占めていますが、やはり将来の不安が先行しており、これらは前年度比で微減の傾向にあります。人生100年時代と言われ、所属する会社も倒産やリストラの危機にさらされる中で、どんな状況でも働き続けられるスキルや経験を積める環境に身を置きたい、と考える人は、根強く存在していると考えられます。

また、2019年4月に「働き方改革関連法」が施行され、DXの浸透によりリモートワークやワーケーションなどの概念も広がりました。5位「残業が多い／休日が少ない」（前年度比1.6pt減）、16位「土日祝日に休みたい」（前年度比1.2pt減）などの働く時間や休暇に関する転職理由が全体的に下降していることから、世の中の働き方に関する認識や環境も改善していると考えて良いでしょう。

転職求人倍率は1.85倍（2021年5月度／doda調べ）となり、2021年度の転職市場は求人数、転職希望者数ともに変動がみられます。転職希望者数の増加が大きく目立ち、求人倍率は下降傾向にあります。転職希望者側が会社や業界に不安を感じて転職活動を行う一方で、新たな雇用を創出する企業（求人側）は減少したと見られます。一部の企業では、新型コロナウイルスのワクチン接種後の景気回復を見越しての採用活動が本格化しており、業界や会社の安定性を求めて転職活動を行う人の希望をいかにくみ取れる採用を行うかがポイントとなりそうです。

採用を検討する際は、採用ターゲットの転職理由を考慮し、それが改善できる自社の魅力をアピールすることが大切です。