転職理由ランキング2020年度＜業種別＞

「IT・通信」では、1位「ほかにやりたい仕事がある」が前年度比0.2pt減の13.9％となりました。2位「専門知識･技術を習得したい」の割合は増加し、前年度比1.5pt増の11.0％です。「IT・通信」は、やりたい仕事をするためや、スキルを積むために転職を選択することが多く、給与の不満などにより、同じ業界の中でより関心のある分野や同じ仕事で年収の高い企業への転職を希望する人が多いことが分かります。

「メディア」では、1位「業界の先行きが不安」が前年度比2.6pt増の15.1％となりました。2位「ほかにやりたい仕事がある」の割合は前年度比1.6pt減の10.5％と順位は変わらないものの1位と2位の差が大きくなりました。「メディア」は、業界内で利益率が異なり給与水準にも差があるため、待遇の改善を求めて転職する人が増加傾向です。しかし、コロナ禍での経済的影響を強く受けたこともあり、業界や会社の将来が不安で転職を希望する人の割合が増加。今後成長が期待できる分野への転職を希望する人も見られるでしょう。

「金融」では、前々年度4位だった「業界の先行きが不安」が前年に引き続き1位。前年度比1.2pt減の13.5%となったものの、2位「ほかにやりたい仕事がある」（前年度比0.9pt減）の10.7%とともに前年と順位の変化はありません。コロナ禍により早期退職を募集する企業が増え、業界の先行きを不安視した人が転職市場に出てくるケースが目立ちます。一方で、4位「顧客のためになる仕事がしたい」、8位「市場価値を上げたい」など前年度比でポイントを伸ばしている項目もあり、フィンテックをはじめとした新しい業界やサービスに活路を見出している人が多いことが伺えます。業界出身者の採用を検討する際は、待遇面はもちろんのこと、今後の事業計画など、自社の将来目指したい姿もアピールすることが必要になりそうです。

「メディカル」では、1位「ほかにやりたい仕事がある」が前年度から1.1pt減となりました。一方で、2位「会社の将来性が不安」（前年度比0.7pt増）、4位「業界の先行きが不安」（前年度比0.8pt増）がともに前年度比からポイントや順位を上げています。MR経験者が特定の商品を取り扱いたいと転職を希望するなど、これまでの経験を活かしてやりたい仕事へ転職する事例が増えています。10位「不規則な勤務が不満」が0.4pt上昇し、TOP10にランクインしました。大手の製薬会社や医療機器メーカーなどでは全国転勤が多く、勤務時間も不規則な環境のため、ワークライフバランスを重視するポジションや企業に応募が集まりやすくなっています。

「メーカー」では、前年度に引き続き「会社の将来性が不安」が1位となっています。３位の「業界の先行きが不安」が前年度比2.1pt増で4位からランクアップ、「倒産／リストラ／契約期間の満了」が2.5pt増で9位となり、より大幅に順位を上げています。会社や業界の安定性はほかの業種よりも比較的高い傾向にありましたが、やはりコロナ禍における経済情勢の不安定さが業界にも悪影響を与えた模様です。ただ依然として「専門知識･技術を習得したい」「幅広い経験・知識を積みたい」がTOP10にランクインしていることを見ると、これまで総合職として一定期間ごとに異動が発生することが多かったメーカーにおいて、専門性を高めたいという理由で転職を検討する人が一定数いることが伺えます。

「商社・流通」では、「ほかにやりたい仕事がある」が前年度3位から1位にランクアップしました。これまでは待遇に関する転職理由を挙げる人が多くいましたが、ほかの業種と比べても例に漏れず会社や業界に不安を転職理由に挙げる人が多くなっています。現在、「働き方改革」を推進する商社・流通業界の企業も増えてきていますが、勤務時間の長さに不満を持ち、コロナ禍における働き方の変化が顕著なうちに就業環境を変えたいと考える人が引き続き増加傾向です。

「サービス」では、前年度に引き続き「ほかにやりたい仕事がある」が10.8%（前年度比0.4pt減）で1位となりました。また5位「残業が多い／休日が少ない」（7.0%）など待遇や働き方に関する不満を理由に転職する人が依然として一定割合存在します。しかし、「倒産／リストラ／契約期間の満了」が2.6pt増で前年19位から8位になりTOP10入りするなど、将来性に不安を感じて転職活動を行う人も増加しています。会社の業績や業界の将来性などをしっかり説明して、転職希望者をまず安心させることが必須となるでしょう。

「小売・外食」は、2020年度でもっともその市場への影響が大きかった業種ではないでしょうか。前年度1位だった「給与に不満がある」の割合が1.4pt減の9.4％となり2位へ。前年度4位だった「会社の将来性が不安」が前年度比2.6pt増で1位となり、会社や業界に対して不安や不満が先行する結果となりました。5位「雇用形態を変えたい」（6.4%）、9位「土日祝日に休みたい」（3.9%）、の割合も一定数あり、「小売・外食」では、将来性に加えて、待遇や休日に関する不満を転職して改善しようとする人が依然として少なくないことが伺えます。