企業統合の難局でも採用活動は止めない。通常オペレーションと新フロー構築を同時進行でも、採用目標は必ず達成する。

2023年に昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が合併し誕生した、日本屈指の化学メーカー。昭和電工マテリアルズの新規事業における人員募集の際にパーソルキャリアRPOサービスを導入。その後、昭和電工の採用へもRPOサービスを広げる。両社の企業統合につき採用フローの一本化を図る際には、RPOチームと採用プロセスを構築した。

採用とひと口に言っても企業によって取り組みは様々です。”レゾナック”の採用について株式会社レゾナック・ホールディングス 組織・人材開発部で、採用グループリーダーを務める高橋佳代さんにお話を伺いました。

株式会社レゾナック・ホールディングス 組織・人材開発部 採用グループの皆さん

文化の違う2社間で、体制の統合を見据えていた

高橋さんが所属する部署について教えてください

2023年1月にレゾナックが発足し、人事組織も刷新されました。私が担当する採用グループは「組織・人材開発部」に属し、主に総合職の新卒採用と経験者採用、ならびに社内公募の3領域の運用を主幹しています。私自身は2022年初頭に入社しており、現在1年が経過するといったところです。

高橋さんのご経歴について教えてください

私は現在に至るまでにいくつかの企業を経験しましたが、いずれも業界は異なります。振り返ると、教育出版社やアパレル製造小売、外資インターネットベンチャー、水処理インフラ産業、総合電機メーカーなどです。

業界がバラエティーに富んでおられますね

確かにそうです。しかし、転職を考える際はあまり業界そのものにこだわりは持ってきませんでした。企業を選択するうえで、どういう経営ステージの会社であるか、経営イシューを解決するために人事に何を求められていて、自分はどんな貢献ができるのかを最も大事なこととして判断してきました。

レゾナックの前身である、昭和電工に入社した経緯を教えてください

昭和電工へ来る前は総合電機メーカーに在籍していました。大きな変革の時にあり、事業成長のために人事はどうあり、何をすべきか。大企業の変容への取り組みと苦悩を大いに学ばせていただきました。とても良い会社でしたし、一員であることも誇らしかった。一方で自分のキャリアと成長という側面から考えると、やはり巨大組織における変革はそう簡単ではないし、細部までの浸透には時間がかかる。何より自分自身が主体的に働きかけることで仕組みを変える、ということの実現にはかなり距離を感じていました。

そう考えていたころ、たまたま昭和電工のお話をいただきました。歴史ある日本の製造業が統合するタイミングで、世界で戦える会社になるための仕組みそのもの、新しい人事の在り方をどう築くかに参画できる段階だと知り、ここなら自ら何かを変えられる、いわば相当手触り感のある仕事ができるのではないかと考え、入社に至りました。

採用の質を保ったままプロセスを一本化するために
RPOサービスをフル活用

入社後、最初に取り組んだことは何ですか?

私が就いたのは採用統括というポジションで、昭和電工と昭和電工マテリアルズを兼務しました。約1年後の統合に向けて動いている複数のプロジェクトを一つにまとめて合理化し、この会社の採用の形を作っていくことが最初の任務です。入社すると取り組むべき問題は考えていた以上に山積みで、入社前に聞いていた状況と違っていることも結構ありました。しかし1月1日の完全統合というゴールに向け、採用の基盤を作り上げるというミッションにとにかく全力を投下しようと割り切りって進めました。

統合ステージで人事に携わるのは初めてでしたが、本当に大変でした。しかしこの会社が世界で戦える企業になるために真剣に取り組んでいることを、日常的な経営発信や、人事メンバーとのやり取りから感じられたことは大きなモチベーションになりました。日本企業として今一度、本気で世界を目指す。そのためにはこれまで長い時間をかけ構築してきた仕組みであっても最適でなければ躊躇なく壊す、手放すこともいとわない。現在の延長という発想はなく、ゴールに向けて必要とされることは何でも挑戦する。ある意味で革命のようなチャレンジに関われるのは私にとって良い経験になると確信しました。

RPOサービス導入の経緯について教えてください

2021年の中頃、昭和電工マテリアルズの再生医療事業領域で大規模な採用が必要になり、RPOサービスを先行して導入しました。その後、2022年度の採用においては再生医療以外の事業領域でも経験者採用のニーズについて、急激な増加が見込まれる状況となりました。限られた採用担当者の体制ではもう対応しきれないと判断し、昭和電工マテリアルズ全体でのRPOサービス導入に踏み切りました。その後、2023年1月の統合後は旧・昭和電工も含むレゾナック全体でRPOサービスを導入。企業としてはここまでで約2年弱ほどお力をお借りしていることになります。

RPOサービス導入の成果についてお聞かせください

私が入社した時点で、昭和電工マテリアルズでRPOサービスを導入し4か月程度が経過しすでにオペレーションは順調に遂行しており、初期運営ステージは定着していました。日常的な運営の仕組みが顕在化され、かつRPOチームが確実に回してくださっていることで、社内担当者は採用プロセス全体の質を向上させる施策など、本来、力を使うべきところにきちんと注力できる体制が整っていました。一方、昭和電工はほぼ社内担当者で全オペレーションを回していましたので、獲得人数にもやはり差が出つつありました。

採用人数の面では、昭和電工マテリアルズは2022年は年間約100名の獲得を目指し、年度末時点の承諾者数は93人で着地しました。私もいくつかの企業で経験者採用を担当してきましたが、技術や研究開発からバックオフィス、かつ若手から事業責任者まで、幅広く複数ポジションを追いかける採用活動でここまでの成果を出せたことはありません。新規ニーズが多く導入初年度であったことを差し引いても、大きな手ごたえを実感でき、何より各事業のスムーズな遂行に貢献できました。RPOサービスの効果の大きさを感じずにはいられません。

評価いただき、ありがとうございます。現状でRPOサービスに課題を感じていることはありますか?

もちろん、採用活動は事業環境を受けて常に変化します。だからこそ私たちも常に採用手法をアップデートする必要があり、そのためにはRPOチームとともに精進していかないといけません。より良い改善を常に考えています。そのためにもコミュニケーションは重要で、日常的にRPOリクルーターと状況をキャッチアップし、チームとしてもミーティングを定期開催しています。ありがたいことに、RPOチームからもレゾナック採用の質を上げていこう、という強い思いをいつも感じます。彼らは私たちの、かけがえない大切な仲間です。

また振り返ると、統合実現の準備フェーズではパーソルキャリアさんには本当に献身的に仕事をしていただきました。採用プロセスの異なる2社の運営基盤を統合するにあたって、まず両社の採用フローを細かく洗い出して違いを明確にし、両社の良い点を残しつつもレゾナックとしてあるべき新プロセスを確定させる。そのうえで、各種ツールやフォーマットの刷新、社内のハイヤリングマネジャーやHRBP、フィールドHRへの説明と浸透徹底、さらには社外の採用エージェントへの説明など、とにかくやるべきことが無数にありました。2社で異なっていたATS(Applicant Tracking System)の統合ひとつとっても、極めて細やかな準備と実行プランニングが求められました。何よりも、採用活動は止めることができません。これらの複雑な統合プログラムを、日常のオペレーションを遂行しながら取り組むのですから、社内の少ない担当者だけではとても実現できなかったと思います。

採用オペレーションに精通しておられるパーソルキャリアさんが必要項目を広く細かく優先度含めて洗い出してくださり、緊密に連携することで採用チーム全体がやるべきことが明確になりましたし、迫るリミットの中でひとつひとつ万全にこなしていってくださったからこそ、短期間で採用基盤の統合も実現できたのだと心から感謝しています。

パーソルキャリアRPOサービスチームメンバーと

統合を叶え、今後はレゾナックの採用基盤を強固にしたい

レゾナックに統合したことで、髙橋 秀仁社長が4つの重要施策として人材育成、サステナビリティ、DX、マーケティングを挙げておられます。
今後は人材確保や育成が重要なテーマになるのではと感じました

社長の髙橋は常に、「経営の一番の宝は人だ」と申しています。GEなどでキャリアを積んだ髙橋の考えですが、人事部門がかかわるテーマがハイライトされるのは、大変うれしいことです。「人事にいるあなたたちは、会社の変革を実現させる立役者なんだよ」というメッセージとして、とても意気に感じます。

高橋さんが採用の中で大切にしていることを教えてください

経験者採用というものは、個人と企業における“ご縁の瞬間”だと思います。個人のキャリアの深まりや人としての成熟に応じて、候補者にとって相応しい企業は当然に異なります。しかしそれは会社側も同じで、経営や事業の状況によって求めるポジションや人材像も変化するものです。数ある対象の中から、候補者と企業が短い時間の中でお互いの奥にあるポテンシャルを理解し、大きな決断をする必要があります。ものすごいご縁です。だからこそ、私たちレゾナックが大切にしていること、提供できうる成長機会や価値、企業のポテンシャルをしっかり真摯にお伝えすることが大切だと思っています。同時に、企業として選考官が候補者の本質を短時間でつかむアプローチも非常に重要です。

当社でも、パーソルキャリアさんに協力いただき選考官トレーニングを様々に行っているところですが、私自身が大切にしているキークエスチョンがあります。人生で初めて転職したファーストリテイリングの最終面接で、柳井社長から受けた質問は3つでした。1つ目は、あなたはなぜ今この会社に来る必要があるのですか、 2つ目は、この会社に入社したら何をやりたいですか、そして3つ目は、あなたは何者ですか。 これはその後、私が採用のみならず人事として他者と対峙する時、相手を理解するうえでの軸となっています。選考官はテクニックを磨き当然の確認を行うだけではなく、候補者に人としてしっかり向き合い、同じ目標に向かう仲間となりえるかを判断する必要があると、今も改めて感じています。

最後に、今後目指していることやパーソルキャリアRPOサービスに求めることを教えてください

目の前だけでなく中長期的な問題と、対処すべきことを整理し、解決できる再現性のある仕組みを作り続けることは重要だと認識しています。ただ、これからはより一層競争の激しいフィールドで人材獲得するための新しいアクション、他社や業界に先駆けた取り組みを数多く仕掛ける必要があります。統合はひと段落し、パーソルキャリアさんと共に構築した採用基盤もお陰様で順調に運用できていますが、既に次の採用ステージに向けて取り組みを進める必要に直面しています。

目の前の厳しい戦いに勝つだけでなく、10年先を見据え必要な施策も並行で築いていかなくてはならず、当然ながら私の力、あるいは採用担当者だけで実現できるものでもありません。仕事の在り方はよりプロジェクトマネジメント的になりつつあり、社内各事業部との連携を通した採用活動など、より一層のアジャイルさが求められています。刻々と変わる採用活動への要求に対し、パーソルキャリアさんには日常的な運営や安定した仕組み作りへの力添えを含め、いっしょに次の採用ステージを目指すパートナーとしてこれからも力を貸していただきたいと思っています。

※取材が行われた2023年1月時点の情報です