2025.08.28
求人広告
求人広告のルールとは?順守すべき法律や禁止されている表現を解説
求人広告では、自社の採用要件や募集要項を、全国の転職希望者に広く伝えられます。しかし、記載すべき内容や禁止されている表現などが法律で細かく定められているため、作成する際はこれらに違反しないよう注意が必要です。
本記事では、法律で求人広告に明記することが義務付けられている内容と、逆に掲載が禁じられている表現を解説します。自社で求人広告を作成しようと検討している人事・採用担当者は、最後までご覧ください。

求人広告について押さえておくべき法律
求人広告を作成する際は、押さえておくべき法律が以下のように6つあります。
求人広告を作成する際に押さえておくべき法律
- 労働基準法
- 男女雇用機会均等法
- 労働施策総合推進法(旧・雇用対策法)
- 職業安定法
- 最低賃金法
- 著作権法
数は多いですが、どれも求人広告に関わる重要な法律です。本項では、それぞれの法律がどのように求人広告に影響するのかという点を、順に見ていきましょう。
労働基準法
労働基準法は、労働者を守るための法律で、労働時間や給与、休日などの労働条件の最低ラインを定めています。求人広告を掲載する際は、この労働基準法に自社の労働条件が違反していないことを、明記しなくてはなりません。
(参照:厚生労働省『労働時間・休日』)
男女雇用機会均等法
性別を理由に、企業が募集や採用の対象を制限することは、男女雇用機会均等法によって禁止されています。
しかし、職務の性質上、性別を限定する正当な理由がある場合は、違反とはなりません。例えば、防犯上の要請から男性に従事させることが必要な警備員や、宗教上の理由で女性が務めなければならない巫女(みこ)などは、例外として認められています。
(参照:厚生労働省『企業において募集・採用に携わるすべての方へ 男女均等な採用選考ルール』)
労働施策総合推進法(旧・雇用対策法)
性別だけでなく、年齢制限を設けて募集や採用の対象から外すことも、法律に違反する行為です。これは、労働施策総合推進法という法律によって定められており、求人広告でも年齢を理由とした制限を記載することは禁止されています。
ただし、35歳未満のキャリア形成を目的としている、あるいは60歳以上の雇用の促進を図っているなどのケースは、例外的に年齢を制限することが認められています。求人広告に年齢制限を表記したい場合は、その理由が法律で認められているかどうかを必ず確認しましょう。
(参考:厚生労働省『募集・採用における年齢制限禁止について』)
職業安定法
職業安定法は、労働者の募集や職業紹介を行う際の基本的なルールを定めた法律です。この法律では、労働者を募集する際に、業務内容や賃金、労働時間などの条件を偽りなく記すことが義務付けられています。このような条件を求人広告に載せる場合も、職業安定法によって定められた項目が全て明記されていることを確認する必要があります。
なお、求人広告で記載しなくてはならない内容は記事の後半で詳しく紹介しているため、そちらも参考にしてください。
(参照:e-GOV法令検索『職業安定法』)
最低賃金法
賃金の記載が求められる求人広告には、最低賃金法という法律も関ります。最低賃金法は労働者に支払う賃金の最低額を定めた法律で、この内容に沿って地域・産業ごとに最低賃金が定められています。求人広告にも、この最低賃金額を下回らないように記載しなければなりません。
(参照:厚生労働省『最低賃金制度とは』)
著作権法
著作権法は、著作物を創作した者の権利を保護することを目的に制定された法律です。著作物の例としては小説や絵画などが挙げられますが、求人広告も該当します。そのため、他社の求人広告を許可なくコピーし、私的利用の範囲を超えて一般に公開することは、著作権法違反と見なされます。
自社の求人広告を改良するには他社との比較が欠かせませんが、著作権法には必ず配慮し、あくまで参考程度の使用にとどめておきましょう。
(参照:総務省『著作権法』)
法律で定められた求人広告に記載すべき内容
ここまでで紹介した法律の内容を踏まえ、求人広告で記載すべき内容をまとめると、以下の通りです。
法律で求人広告への記載が定められている内容
- 業務内容・従事すべき業務の変更の範囲
- 契約期間
- 試用期間
- 就業場所・就業場所の変更の範囲
- 就業時間
- 休憩時間
- 休日
- 時間外労働
- 賃金
- 加入保険
- 受動喫煙防止措置
- 募集者の氏名または名称
上記のうち、固定残業代を「賃金」として載せる場合は、その固定残業代に含まれる労働時間数は基本給に含めるのではなく、別途明示する必要があります。また、「募集者の氏名または名称」の表記でも、求人を出している企業とグループ企業を混同しかねない書き方は禁止されているため、注意しましょう。
なお、これらの項目が明確かつ最新の情報で記載されていない場合は、職業安定法違反と見なされる可能性があります。罰金の対象となる恐れもあるため、必須項目が抜け漏れなく求人広告に記載されていることは必ずチェックしてください。
求人広告に関するルールが重要な理由
求人広告に対するルールが法律で細かく定められている理由としては、以下の2つが挙げられます。
求人広告に対するルールが重要である理由
- 職業選択の自由を順守するため
- 自社の求める人材を採用するため
本項では、その詳しい内容を解説します。
職業選択の自由を順守するため
性別や年齢による不当な差別で就職の機会を制限することは、基本的人権を侵す行為と見なされます。このような制限を設けた求人広告を排除し、転職希望者の「職業選択の自由」を保護するには、法律による規制が不可欠です。
職業選択の自由は、基本的人権の一つとして、日本国憲法第二十二条で定められています。その内容は、公共の福祉に反しない限りは、誰もが職業を自由に選択できることを保障するというものです。従って、求人広告でも合理性のない制限が厳しく規制されており、職業を自由に選択できる権利が保護されています。
また、転職希望者に誤解を与えて間違った判断をさせることも、職業を自由に選ぶ機会を制限する行為だと見なされます。このような理由から、先に述べた職業安定法違反となる記載も認められていないのです。
(参照:e-GOV法令検索『日本国憲法』)
自社の求める人材を採用するため
法律にのっとった求人広告は、正確な情報が過不足なく掲載されているため、誤解に基づく応募やそれによる入社承諾前辞退を未然に回避できます。従って、自社の採用要件に合致した、自社が必要とする人材からの応募が増えるという効果も期待できるでしょう。
求人広告への掲載が禁止されている表現・内容
求人広告を作成するのであれば、掲載すべき内容だけでなく、記載してはならないことについても押さえておかなくてはなりません。ここからは、以下の項目について解説します。
求人広告で記載してはならないこと
- 禁止されている表現
- 禁止されている内容
禁止されている表現
求人広告に掲載してはならない表現は、大きく分けると以下の通りです。
求人広告で禁止されている表現
- 性差別表現
- 年齢差別表現
- 特定の人を差別・優遇する表現
- あいまいな表現
性差別表現
性別を理由に募集や採用の対象を制限できないことは前述した通りですが、このような制限の表記以外にも、性差別となり得る表現には注意が必要です。
例えば「ウェイター」という表記を求人広告に載せることは、ウェイターが長らく男性のみを指す言葉であったため、性差別表現と見なされる恐れがあります。このような場合は、「ウェイター・ウェイトレス」と併記する、あるいは「ホールスタッフ」と言い換えるなどして、適宜調整しなくてはなりません。
また、「主婦さん歓迎」のような表記もルール違反です。主婦という言葉を使って言い換えるのであれば、「主婦さん活躍中」として、事実を述べる表現にとどめるべきでしょう。
年齢差別表現
お伝えしたように、例外的な理由がない限りは募集や採用に年齢制限を設けられないため、求人広告でも募集要項に具体的な年齢は記載できません。たとえ、「若者向けの商品を展開する店舗のため、若い人を募集」のような抽象的な表現だったとしても、ルール違反と見なされる恐れがあります。従って、できる限り年齢を想起させる表現は使わない、あるいは事実を述べる範囲にとどめるなどの対策を施しましょう。
なお、例外的な理由により求人広告に年齢制限を載せる場合でも、いくつかの条件を満たしていなければ正当だとは認められません。このような表記を検討する際は、条件も含めて詳細をよく確認してください。
特定の人を差別・優遇する表現
性格や出身地などで人を分類して差別する、あるいは優遇する表現も禁止されています。
例えば、応募条件に「性格が穏やかな人」と記載し、特定の性格の転職希望者のみに制限するような行為は認められていません。しかし、「穏やかな対応ができる人」などの表現であれば、穏やかな対応ができるという「能力」で区別していることになり、記載可能となります。転職希望者の適性や能力によって採用選考を行うことは問題ないため、こうした点も踏まえた上で求人広告の言葉選びは慎重に行い、表現に気を配りましょう。
あいまいな表現
先述の通り、職業安定法では労働条件を偽りなく明確に示すことが義務付けられているため、あいまいな表現は避けたほうが無難です。
例えば、募集要項の資格や経験の欄に「フォークリフト」と表記されているだけでは、運転免許が必須なのか、あるいは経験が求められるのかを判断できません。転職希望者の誤解を招かないためにも、「フォークリフトの運転免許必須、実務未経験可」など、誰が読んでも同じように解釈できる明快な表記を心がけることが大切です。
禁止されている内容
求人広告を作成するのであれば、記載が禁止されている以下の内容も必ず把握しておかなくてはなりません。
求人広告で禁止されている内容
- 適性や能力に関係のない事柄の制限
- 実態と異なる労働条件
適性や能力に関係のない事柄の制限
すでに述べたように、適性や能力に基づいて採用選考を行うことは認められています。しかし、性格や出身地、あるいは家族構成などは本人の努力で変えられない事柄であるため、このような項目によって制限を設けてはなりません。
また、適性や能力に関係のない事柄は、募集や採用を行う際に転職希望者から聞き出すことも禁止されています。採用活動に関わる担当者が複数人いる場合は、社内でも認識を共有し、違反しないように配慮する必要があります。
実態と異なる労働条件
実態と異なる労働条件を求人広告に掲載すると、転職希望者をだましたとして法律違反となる恐れがあります。たとえ過去に適用していた事実のある労働条件だったとしても、現在の状況と異なっていると、虚偽の情報を載せていることになってしまいます。そのため、求人広告には最新情報を反映し、もし掲載時から入社までに変更が生じる予定なら、その旨を転職希望者に伝えなくてはなりません。
なお、求人広告に最新の労働条件を反映している場合でも、その条件自体が法律違反であれば罰則の対象となります。具体例としては、最低賃金を下回っている、あるいは勤務時間が法定労働時間を超過しているなどのケースが挙げられます。求人広告を掲載する・しないにかかわらず、違法性が疑われる条件は設けないように注意しましょう。
虚偽と見なされる可能性が高い求人広告の特徴
ルールを意識して求人広告を作成していたとしても、以下の特徴に当てはまる場合は、転職希望者から虚偽と見なされてしまう可能性があります。
虚偽と見なされる可能性がある求人広告の特徴
- 1.給与に関する記載があいまいでわかりにくい
- 2.交通費の支給額に関する規定が記載されていない
- 3.記載されている情報の実績がない
- 4.雇用形態に関する記載が妥当ではない
ここからは、具体的にどのような記述をすれば虚偽と見なされないのかを解説します。求人広告を作成する際は、本項の内容をぜひ参考にしてください。
特徴1.給与に関する記載があいまいでわかりにくい
求人広告に給与を記載する際は、「最低賃金以上の支払いがあり、どのような手当がいくら含まれているのか」がわかるように表記することがポイントです。明確でない表現は転職希望者に誤解を与えるため、職業安定法に違反していると捉えられかねません。
例えば、「月給20万円可能」や「月給18万~30万円以上」といった表記は、給与の最低金額や上限があいまいになってしまいます。給与に関する記載は、最低金額と上限を明らかにし、誰が見ても誤解のない表記にしましょう。
特徴2.交通費の支給額に関する規定が記載されていない
交通費の支給額に金額の上限や距離などの条件がある場合は、その規定も求人広告に記さなければなりません。記載がないと、交通費を偽っていると見なされ、職業安定法違反となる恐れがあります。
特徴3.記載されている情報の実績がない
求人広告には、勤務時間や残業時間などを載せなくてはなりませんが、このような実績は実態に基づいて記載する必要があります。例えば、実際は残業が月に30時間ほどあるにもかかわらず、求人広告に「残業月5時間程度」と記載することは、当然のことながら虚偽と見なされます。
また、昇格や昇進の情報を載せる場合も注意が必要です。仮に社内体制が整っていたとしても、実績がないのであれば、求人広告への記載はできません。そのため、昇格や昇進の回数、賞与などを明示する際は、前年度実績に基づいて正しく記すことが大切です。
特徴4.雇用形態に関する記載が妥当ではない
雇用形態も、実態通りに正確な情報を記載してください。たとえ正社員登用が前提となっている求人募集だとしても、入社時の雇用形態が契約社員であれば、求人広告に「雇用形態が正社員である」とは明記できません。
ただし、正社員登用制度があることは、実績に基づいていれば記載可能です。「入社時は契約社員やパート・アルバイトからスタートするものの、そこから正社員になった実績がある」とアピールしたい場合も、求人広告に記載して問題ありません。
ルールを守らずに求人広告を掲載するリスク
ここまででお伝えした、求人広告に関するさまざまなルールを守らなければ、以下のようなリスクがあります。
求人広告のルールを守らずに掲載した場合のリスクの例
- 転職希望者とのトラブルが発生する
- 法的な処罰を受ける
- 企業のイメージダウンにつながる
求人広告の内容と実態が異なる場合、求人情報を見て応募した転職希望者との間でトラブルが起こる可能性があります。そのため、たとえ応募が集まらない状態だったとしても、求人広告の内容は決して偽ってはなりません。もしルールを破った場合は、法的な罰則を受けることになります。結果として、企業のイメージダウンにつながり、ますます応募が集まらなくなるでしょう。
いずれにせよ、求人広告のルールを破ると企業の大きな損失に発展するため、偽った情報がなく誤解を与えることもない求人情報を載せるように心がけてください。
求人広告のルールは事前に把握した上で順守することが大切
今回は、求人広告を作成する際に押さえておくべき法律と記載内容、そして掲載が禁止されている表現と内容を解説しました。
求人広告には、法律で定められた細かい規制が複数あります。このようなルールを破って掲載すると、転職希望者とのトラブルや企業のイメージダウンにつながり、大きな損失となりかねません。そのため、法律による規制の内容を事前に確認した上で、それにのっとって求人広告を作成することが大切です。
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