人事・採用担当者なら知っておきたい選考・入社トラブルの事例と回避方法

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人事・採用担当者なら知っておきたい選考・入社トラブルの事例と回避方法

2023.01.30

中途採用のキホン

転職市場が右肩上がりとなっており、人材の獲得競争が厳しくなっている中、選考合格の連絡をした求職者から辞退の申し出があったり、退職交渉が難航し入社の時期が後ろ倒しになったりするなど、選考・入社にまつわるトラブルに直面する人事・採用担当者も少なくないと思います。

選考や入社に関連するトラブルは、活躍を期待していた優秀な人材を逃してしまうだけでなく、採用活動にかけた時間やコストの面でも大きな負担となり、事業にマイナスの影響を及ぼしてしまいます。また、採用活動における求職者とのコミュニケーション・対応の不手際は、企業への信頼やブランドを損なうリスクを伴います。

そこで今回は、選考・入社に関連するトラブルを防ぐためにはどんな点に注意すればよいのかについて解説していきます。

~はじめに~ そもそも内定とは?

一般的には応募後に書類選考や面接などが行われ、最終的に企業が採用することを決定し、求職者が入社することを承諾した場合、つまり、入社して働くことについて双方が合意した状態を内定と呼びます。求職者(個人)には「職業選択の自由」があり、入社して働くことについて承諾したとしても辞退が可能となっています。

選考結果の連絡におけるトラブル

実際の採用活動の場面において、内定という言葉は上記の定義とは異なる使い方をされているケースが少なくありません。例えば、最終面接合格の際に、「〇〇さんは評価も高く、内定となりました。」と連絡したり、「正式な合否の連絡はあらためてさせていただきますが、〇〇さんは内々定です。」と伝えたりしてはいないでしょうか?

実際に、最終面接官の評価が高く、選考通過となったことをいち早く伝えるべく内定という言葉を使って連絡したことによりトラブルに発展してしまったというケースもあります。具体的な事例をいくつか見ていきましょう。

最終面接合格を内定と伝えてしまったケース

「他社から入社承諾の返答期限を迫られている状況のため、第一希望なので早めに結果を出していただきたい。」といった相談を求職者から受けることはないでしょうか?選考プロセスにおいてイレギュラーな対応が求められたり、緊急性の高い対応を求められたりする時こそ、慎重に採用活動を行うことが大切です。

具体的なトラブルの例としては、最終面接官の評価としては合格だったため求職者に内定と伝えてしまったものの、その後に実施された採用決裁者による会議の中で、組織体制の変更・社内異動を加味した人員の見直しにより、採用が見送られたケースなどがあります。

求職者が第一希望と考えていた場合、他の選考中企業を辞退したり、現職企業に退職交渉を進めてしまったりする可能性もあります。不当な採用取り消し(解雇)と受け取られ、最悪の場合、損害賠償などに発展するリスクなどもありますので、選考結果を伝える際には内定という言葉に注意が必要です。

選考結果の連絡の際には内定という言葉を使うのではなく、面接合格や採用決定などと伝えるようにしましょう。採用の決裁(稟議の結果)が確定していない場合には、最終面接の評価・フィードバックにとどめ、求職者の状況に寄り添いながら正式な選考結果をいち早く出せるようフォローしましょう。

口頭のみで内定連絡をしてしまったケース

求職者の入社の意向が強く正式な採用の決裁が下りたため、いち早く合否の連絡をすべく、口頭にて内定と連絡することについてもトラブルのリスクが伴います。

募集内容(求人広告や求人票)や面接でも処遇面の話を伝えていたものの、その後、提示した正式な採用条件(給与などの待遇)が事前に求職者が想定していたものを下回る結果となったり、希望の入社日の折り合いがつかなかったりするケースがあります。

最終面接合格後、どのようなプロセスで採用の決裁がなされるのか、採用条件や入社日についてどのように決定・通知をするのか、人事採用担当者として正しい理解をすることが重要です。予期せぬトラブルを引き起こすことがないよう、採用条件通知書の発行など、入社の合意の前提条件となる情報に相違が出ないよう丁寧な対応・フォローを心掛けましょう。

処遇・給与・希望年収との不一致によるトラブル

企業には労働基準法第15条第1項および労働基準法施行規則第5条第1項により、「労働契約締結時における書面による労働条件の明示」が義務付けられていますが、明示しなければならない項目は決まっているものの、その書式は企業によってさまざまです。

入社後の想定年収は希望の金額を満たしていても、「現職と賞与の割合が変わり月給が下がった」「残業が少ないため月の収入が不安だ」などの理由で現実とのギャップを感じる求職者も少なくありません。また、求職者本人は納得していても、その家族やパートナーから転職を反対されることもあります。

将来的な昇給・昇格の可能性や、平均残業時間を基準とした想定年収に関する説明、入社初年度における賞与の支給有無・算定期間など、思い違いやギャップが生まれないように丁寧に説明することが大切です。

【処遇・給与・希望年収との不一致によるトラブルの例】

  • 「年収はほぼ同じだが、月給が下がるため転職後の不安が大きくなった。」
  • 「入社初年度の賞与が支給されないことを入社承諾後に初めて知った。」
  • 「想定年収に占める残業手当の割合が思っていた以上に高いことがわかった。」

希望の入社日の折り合いがつかないトラブル

一般的に現職中の方であれば、退職の申し入れを行ってから1カ月~2カ月後に入社されることがほとんどです。配属予定部署の状況を確認し、上記の期間での退職・入社が可能であれば円満退職を前提に退職交渉を進めていただくようお伝えしている企業も多いのではないでしょうか。

しかし、実際には現職中の企業からの強い引き留めや担当中の業務やプロジェクトの状況などにより、退職交渉が難航するケースも少なくありません。そのため、退職交渉に関するフォローや定期的な連絡を行うことはとても重要です。また、入社することにお互いが合意する段階で「●月●日付入社」を前提とするなど、配属先と求職者の間で事前に話し合っておくことも大切です。

「入社の受け入れ準備のため、入社日前月の●日前までには退職日を確定する。」など、入社までの具体的なスケジュールについて求職者と話し合っておくとともに、入社日が予定よりも遅くなることについてどのくらい許容することができるかについて配属先に確認しておくと良いでしょう。

【希望の入社日の折り合いがつかないトラブルの例】

  • 「退職交渉が難航し、入社できる時期が半年以上先となり入社承諾後に辞退となった。」
  • 「退職日の確定が遅くなり、入社日が1カ月遅れる事態となった。」
  • 「直前になって予定していた入社日に間に合わない(入社できない)ことが判明した。」

入社を辞退するその他の理由とは?

入社を辞退するその他の理由には以下のようなものがあります。代表的な辞退理由への対応策について解説します。

  • 職場環境・残業時間などの条件
  • 勤務地や将来の転勤の可能性
  • 求人の募集内容や面接時の条件と乖離(かいり)があった
  • 社風が自分に合わないと感じた
  • 面接官の印象(行動・態度・人柄など)
  • 他社の選考に通過した、条件が良かった
  • 家族・パートナーからの反対
  • 現職による引き留め
  • 入社承諾後のフォローがなかった
  • 口コミサイトなどのネガティブ情報

職場環境・残業時間などの条件

職場見学など、オフィスをはじめ実際に働く環境について説明しておくことは重要です。残業時間については、平均だけでなく、繁忙期や閑散期の働き方についても触れておくとよいでしょう。残業時間以外にも出勤時間が早い・終業時間が遅いなど、具体的な時間帯や通勤事情などについても説明しておくことをお勧めします。

勤務地や将来の転勤の可能性

応募段階では複数の勤務地候補があり、勤務地が具体的になった際に折り合いがつかなくなるケースがあります。また、転勤の可能性については、本人だけでなく家族・パートナーの意向も大きく関わってくるため、選考中のできるだけ早い段階で情報を開示し、認識の相違がないようにすることが大切です。

他社の選考に通過した、条件が良かった

企業の採用手法が多様化している背景もあり、複数の求人媒体・人材エージェントを利用して転職活動をしている求職者もいます。そのため、実は他に選考中の企業があり、その企業への入社を決めたため、入社を辞退されるといったケースも少なからず発生しています。

自社よりも志望順位の高い他社があることがわかれば、求職者の転職理由や仕事選びのポイントに合わせて自社の魅力を訴求できる可能性があります。人事採用担当者がフォロー担当として対等な立場でコミュニケーションを取るなど、信頼関係を築き、併願先の状況を把握することも意識して採用活動を行いましょう。

社風が自分に合わないと感じた

入社日当日までの期間は求職者とのコミュニケーションが希薄になりがちです。選考合格を勝ち取るまでは志望度が高まっていた求職者も、入社日当日までの期間は転職が現実のものとなり冷静になるものです。実際に転職した後のことをあれやこれやと考え、一緒に働くメンバーと話をする機会がなかったことが入社への不安を高めてしまうこともあります。

選考のタイミングで社風や職場の雰囲気が伝わるように複数名の現場の社員と話をしてもらう時間を持つことや、オンライン(Web)やオフラインによる面談や懇親会を行うなど、入社に向けて一定の頻度でコミュニケーションを取ることは効果的です。

<入社承諾後に転職を不安に思う要因>

  • 「配属先のメンバーと話をする機会が少なく入社に当たり不安が大きくなった。」
  • 「入社承諾後、入社準備に必要な情報などの連絡がなかった(遅かった)。」
  • 「入社に当たり質問した内容に関する回答が不十分だと感じた。」

まとめ

転職は求職者自身にとってはもちろん、その家族・パートナーにも大きな変化・影響があるため、「この会社に入ることが正しい選択なのかどうか」確信が持てず、入社承諾後に悩みを抱える方も少なくありません。

悩みの原因は、「本当に希望の仕事ができるかどうかわからない」「もっといい会社があるかもしれない」「職場の雰囲気や一緒に働く仲間の様子がつかみきれない」「給与や待遇が希望通りではない」など、人によって異なります。

そのため選考の段階から、上司や一緒に働く仲間との交流、職場見学や経営層との面談の場など、求職者の志向を見極めて必要な情報提供や選考の進め方を工夫することが重要です。

また、求職者の入社の意思を承諾書などの書面をもって返答いただくことや、その回答期限を設けること、入社日を確定することなどは、転職への覚悟を決め、入社後の新しい仕事にしっかり向き合っていただくために有効です。

人材獲得競争が厳しくなっている中、現職企業からの引き留めによって退職交渉が難航するケースも少なくないため、選考合格/入社承諾後の定期的なコミュニケーションはとても重要です。継続的に連絡を取り合うことでお互いの信頼関係を築き、入社への意思が揺らぐことがないようフォローしていきましょう。

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【関連サイト】 パーソルキャリアの人事・採用担当者向けメディア「d’s JOURNAL(ディーズジャーナル)

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